人生の第三コーナーの衣食住

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生田斗真主演映画「告知犯」―山上徹也を想起した

好きなサスペンスもののテレビ再放映時間は、もっぱら家にいる者向けに昼間になっている。土曜の夜は時間つぶしに困ることがある。ネットフリックスにもwowwowにも加入していない者にとって、アマゾンプライムビデオが頼りだが、観たいものが少ない。それでも1か月400円ちょっとで時々見ごたえのある映画を鑑賞できるのは、配送無料と合わせて、まあ価値がある。

 

2か月ほど前に観た有村架純の「前科者」、2日前は生田斗真の「予告犯」。

いずれも観終わった後、ずしんと心に残るものがあった。自分の知らない日本社会の暗部を垣間見たような気がした。

 

2015年製作の「予告犯」は、2か月前の安倍元首相の暗殺容疑者の山上徹也の境遇を想起させた。

 

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派遣の仕事に就くにも苦労する主人公とその4人の仲間。山上は単独犯だったようだが、映画は、父親が日本人だというフィリッピンから来た若者を含め仲間がいる。が、主人公は自分ひとりですべての罪をかぶり死んでいく。

 

山上は海上自衛隊を辞めた後、宅地建物取引士やフィナンシャルプランナーの資格を取っている。宅建は大学の法学部出身の自分にはそれほどハードルは高くなかったが、山上は奈良県有数の進学校出身とはいえ高卒だ。FPは経済学の知識が必要。これらを独学で取得した山上は、銃までYouTubeで作ってしまい、暗殺を成し遂げた。ターゲットをピンポイントに定めて。頭のいい努力家であることは間違いない。

 

映画の主人公も優秀でITに強い。生田斗真が演じるのだからイケメンでかっこいい。現実の山上は、犯行前は「恋人に捨てられ」た「非モテ」中年男なのだろうが、逮捕後は「山上ガールズ」と呼ばれる女性ファンが増える。「ハイスペックイケメン」という形容詞までつけてもらって、支援金が刑務所に送られてくるそうだ。東大卒の警察官を演じる映画のヒロイン戸田恵梨香は、絶命した生田斗真を抱きしめ号泣する。山上も罪を一人で背負い、7月8日以降日本の保守政治を揺るがし、統一教会は存亡の危機に面している(そうであって欲しい)。

 

山上事件は早くも映画化され、上映初日は9月27日の安倍さんのなんちゃって「国葬の儀」にぶつけるそうだ。安倍さん死亡の後、文句なしに20世紀の歴史を変えたゴルバチョフが亡くなり、9月19日には世紀をはさんで激動の歴史を歩んだエリザベス女王の、正真正銘の「国葬」が行われる。日本の天皇陛下だけでなく、なぜか岸田総理まで出席で調整中という。女王の国葬にはバイデン大統領はじめ、各国の要人が列席するのだろう。

 

山上が自分を映画「ジョーカー」になぞらえていたことから、秋葉原の無差別殺傷事件、京アニ放火事件、小田急線や京王線の電車内でナイフを振り回した犯人たちと同列に扱う識者も多いが、違う。単なる下級国民のリベンジ物語を突き抜けたヒーローなのだ。無暗に罪もない人にナイフを振り回したり、焼死させたりするのではなく、映画の生田斗真同様ターゲットだけを狙った。映画では調子のよい政治家もターゲットのひとりだ。

 

それにしても、豪華出演陣。戸田恵梨香窪田正孝は朝ドラ、鈴木亮平大河ドラマの主人公。濱田岳滝藤賢一田中圭。山上事件は9月27日公開の即席映画以外にも、裁判が終われば大物監督で映画化されるはずだ。豪華出演陣の秀作であることに期待しよう。

 

もう一つ。「予告犯」は漫画が原作だという。この映画を観た同じ土曜の夜、「まあ観るか」とチャンネルをあわせた「池上彰ニュースそうだったのか!!」で、デジタル版縦読み漫画市場規模が、かつてないほどの盛況だと伝えていた。自らストーリーを考え、筆1本でビジュアル化もする漫画家も、売れるまで派遣の仕事を転々としているのだろう。それでも売れる人ほんのひとにぎり。日本社会の暗部を見る機会も多いに違いない。「予告犯」はそんな漫画家の経験も反映されているのだろう。

 

(以上)