「ひきこもりの日記」――サスペンスドラマ1
コロナに感染するのが嫌で、引きこもり状態が3年続いた。
ようやく、政府がマスクは自主判断に任せる、と言い出したけど、コロナに限らず、普通の風邪も含めてウイルスにどう感染するかを知ると、人混みで大声で話す人が多い場所では、マスクをしていた方が安心ではある。飛沫感染対策だ。
接触感染の可能性は低いといわれているが、手指のアルコール消毒は続けたい。指に唾液を付けてページをめくる人、鼻くそをほじくる人、指についた料理の汁やソースをなめてきれいにしたつもりの人。衛生感覚には個人差がある。
コロナ前から毎年2-3月はスギ花粉でマスクは外せなかった。2011年3月11日、東京でも死ぬかと思った東日本大震災の大きな揺れだが、この日はその揺れと揺れの瞬間までの強烈な目のかゆみとともに思い出す。私の花粉ピークは毎年3.11前後なのだ。
花粉を体内に入れないため、春らしくなってものんびり出歩けない、感染症の蔓延状況にかかわらずひきこもりを余技なくされている。3-4月の行楽の季節に丸2か月で歩くのを控える。出歩くと、くしゃみと鼻水と、何よりも猛烈な目のかゆみに苦しむことになる。75-80歳くらいまでのこれからの限られた健康寿命が毎年2か月奪われているということになる。一生満開の桜は楽しめない。舌下免疫療法では7割の人に根治効果があるそうだが、今年こそ賭けてみようかと思う。
3-4月はいやでも家にいることになるのだから、片づけ。残したい古い写真だけを選んでスキャンしてデジタル保存して、ネガと焼いた写真は捨ててしまおう、と思って早2か月。プリンター兼スキャナーのある部屋は寒い、というのが口実だった。暖かくなればこの口実は使えない。
昼下がりは、私のようにやらなければならないことがあるのに、別のことに逃げ込んで漫然と時間をつぶそうとする人が多いのだろう。テレビではサスペンスドラマの再放送を各チャンネルでやっている。地上デジタルでは平日はテレビ朝日だけだが、BSでは日テレ、TBS、テレ東、フジと各局がなにがしか再放送ドラマをやっている。晩年の橋田壽賀子さんは生前「相棒」を観ていたというが、大ヒットドラマの脚本を何本も書いて90歳を過ぎてのテレビ鑑賞。メイ・サートンというベルギー生まれの米国人詩人、作家(1912-1995年)は「独り居の日記」に、夕方にテレビ番組があるのでほっとすると書いている。彼女は講演旅行のない時は、昼間庭の手入れをし、夕方はテレビのチャンネルをひねったのだろうが、橋田さん同様、多くの創作を生み出してきた人だ。私はただ、漫然とテレビを見ているだけ。
ちょっと反省して、サスペンスドラマの感想でも書き残しておこう。
西村京太郎さんが亡くなって1年というので、今週は月曜から高橋英樹が十津川警部を演じるトラベルミステリー何本か再放送されていた。2002年頃の作品で英樹さん若い。同じ時間帯に桃太郎侍もやっていて、吉永小百合や浜田光夫と日活の青春映画に出ていた頃からのファンにとっては、美青年が中年になって貫録がついた頃の作品なのだと感慨深い。
余談だが、「歌舞伎の中の日本」という非常に中身の濃い本の第六章「任侠の原点―夏祭浪花鑑」で、著者の松井今朝子さんは任侠スターの関連で、高倉健が全く武士役が似合わない、けどヤクザ、前科者をやらせたら天下一品という趣旨のことを書いておられる。高橋英樹は健さんとは対照的に、品の良い侍も貫録のある警部も似合っていて、塀のこちら側の役柄の俳優さんだ。亀さん役は亡くなった愛川欽也。もっと新しいシリーズでは高田純次も実直な警部の補佐役亀さんを演じているのだが、どうしてもちゃらんぽらんイメージがつきまとう。
西本役は森本レオで、芸能界のセクハラ疑惑で#MeTooと声を上げた水沢アキが干されたという噂を思い出す。更に余談だが、今週の地デジテレ朝で再放送中の内野聖陽の「ゴンゾウ」に出てくる筒井道隆(大好きな俳優さんのひとり)が介護する母親役が有馬稲子。映画監督市川崑にかどわかされ、中絶させられた超絶美人女優が「日経私の履歴書」に綴った恨み節を思い出し、改めてその悔しさを想像し共感を覚える。これも日本版#MeTooだ。
トラベルミステリーは日本各地の名所に電車で行くシーンが多い。電車で旅行したような気分になれる。サスペンスといえば夏樹静子の作品も人間模様、女の情念を深く掘り下げた記憶に残る作品が多い。毎週土曜日の佃次郎シリーズについては、また別の機会に書いてみることにする。
2023年3月1日記