人生の第三コーナーの衣食住

ライフスタイルブログ:インテリア、家のメンテ、ソーイング、失敗続きのパン作りなどをつづっていきます

ハード系パンを焼くコツープロの小難しい工程に惑わされない

パンのごはん化

昨年の自粛期間中は、物不足で業務用の大容量のドライイーストしか買えなかった。

このイーストを使ってパン焼きの腕を上げたい。自分の好みに合ったパン屋さんでパンを買えば確実なのだが、買いに行くのも一仕事。パンをむき出しで陳列し、狭い通路に来店人数の制限もせず、友人同士や家族の複数の客があれこれ話しながら物色している店もある。ならば、イーストは山ほどあるのだから、強力粉もそろえて家で焼けば安心。米が主食の日本人は家でごはんが炊けるのに、主食のパンを毎日(雨の日も風の日も)買いに行くフランス人は大変だと思っていた。ごはんより面倒だが、家で小麦粉から食べられる状態にできる、という意味で私の中では段々パンがごはん化してきた。

 

昨年来の課題のバゲットの気泡だ。ホームベーカリーに練りを任せると、食パンのような均一の肌理の生地になり、バゲットらしくならない。生地は自分で練る。

水の量を多くするー失敗

ネットには大き目の気泡を作るには水の量を多くする、と書いてある。で、分量より多めの水を加えたが、これが大失敗。発酵はするのだが、生地が柔らかすぎてべたべた。とてもじゃないが成型できるような状態ではない。台所のカウンターも悲惨な状態。同時にネットで見つけたレシピには、使い捨ての手袋を使うといちいち手を洗う必要がない、とあったのでエンボス加工の手袋を使ったら、発酵した生地の3分の2は手袋について廃棄。

残ったべたべたの生地にたっぷり強力粉を加え、いつものレシピ通り粉と水の分量くらいにして、なんとかそれらしい形にして焼いてみた。形は悪いが、まあまあの出来で、気泡もある。右ふたつがそれ。左の色が濃い目の1片は、パン屋さんで買った全粒粉入りのバゲットで、気泡は私のものより大きい。さすが!

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はじめての大き目の気泡

大きな気泡は泡立て器で生地を混ぜればできるーー嘘である

水の量を多くする、という以外に、生地を泡立て器で混ぜれば大きな気泡ができる、とネットに出ていた。写真入りである。寄稿者はこれで成功したのかもしれないが、水の量は少なめにしても、泡立て器の隙間に生地がいっぱい付き、これを指でしごいてから成型するのは大変だった。気泡も思ったほど大きいものができるわけではない。泡立て器、アウト!

 

低温長時間発酵の簡単生地作りーー手軽さを勘案するとなかなかの出来でおすすめ

テレビのバラエティ番組で、低温長時間発酵のパンが紹介されていた。スプーンで生地をまぜる、とのことでお手軽そう。

「強力粉 180グラムに水150cc、塩3グラムとイース2グラムをスプーンでさっさと混ぜる。ラップをして冷蔵庫で一晩発酵させ、翌朝軽く成型しオリーブ油をぬってオーブントースター強で13分焼く」とのこと。慌ててテレビを見ながらメモした。これならハードルが低い。懸命にこねなくても、すぐに粉っぽさはなくなるし、手は汚れない。スプーンで大きくかき混ぜて焼くのだから気泡はできるはずだ。

 バルミューダのオーブントースターはワット数で切り替える。多分一番大きいワット数のものが「強」なのだろう。料理番組ではなく、バラエティ番組の中でエピソードみたいに紹介されたレシピだから、あまり親切ではないのは仕方ない。

朝から成型してから焼くのは結構大変だ。朝食では起き抜けにさっとパンを食べたいし、大体、焼き立てのパンは柔らかすぎて切りにくい。そこで午前中に生地を作って冷蔵庫に入れておき、夕方成型して焼いてみた。気泡もできた。丁寧なレシピ紹介ではなかったが、意外に手間がかからず、掛けた時間に比し出来映えも味も悪くない。

 

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モルドパウダーを入れなかったので色は白すぎるが、気泡はできた

 

以前、年末の大掃除に関するエントリーでも指摘したが、プロを自称する人は、工程、プロセスを不必要に複雑にしているのではないだろうか?こっちは別にパン焼きを極めようと思っているわけではない。ちゃっちゃっと、そこそこおいしいパンが自宅で簡単に焼ければ、という程度なのだ。

ホームベーカリーは炊飯器で米を炊くようにパンを焼けるが、パンは形や気泡や硬さで味も印象も異なる。食パン型のバゲットでは美味しく感じない。なんとか手軽にバゲットが焼けないものか?バラエティ番組で紹介された簡単なレシピは、私の要求に十分合っていた。

 

これまでの失敗で小難しい余計な段取り、工程だと断言できるのは次のこと

硬く絞った濡れふきんで生地を覆う――絶対やめよう

ほとんどのパン焼きのレシピは、一次発酵、二次発酵の際に生地を硬く絞った濡れふきんで○○分覆い、暖かい場所で発酵させる、とある。

ひどい目にあった。ふきんのあちこちに生地がくっつき、洗ってもとれるわけもなく、結局ふきんを捨てることになった。上等のフランス製のふきんで覆えば、おいしいフランスパンができる、なんてことは全くない。乾かないようにする、という意味ではラップでいい。生地が多少くっついても最初から使い捨てのつもりだし。濡れふきんなんて、霧吹きもラップもない時代の道具ではないか、と思う。

 

霧吹きは必要ない。スチームオーブンである必要もない

ラップで覆えば表面が乾燥する心配はない。生地に水分があるのだから、改めて霧吹きする必要もないのだ。プロはこの霧吹きの段取りをどうしても素人にやらせたいのか、「スチームオーブンがない場合は、生地を霧吹きでたっぷり湿らせる」なんて書いてある。

 シャープヘルシオのスチーム機能を使って二次発酵をしてみた。タンクに水を入れ「発酵モード」に合わせたところ、レシピ通りに生地は2倍にしっかり膨らんだ。それからいよいよ焼き。ヘルシオのスイッチを「オーブンモード」に合わせて焼き始めた。なかなか焼き色が付かない。温度も時間も間違いなくレシピ通りなのに!

スチーム発酵させたので庫内に蒸気が充満しており、普通のオーブンのように焼き色が付かないのだ。多用途の器具には、製造者が気づいていない問題もある。

 

「野菜室」で発酵させる必要はない

冷蔵庫での低温長時間発酵でバッチリ。これもまた冷蔵庫の「野菜室」で発酵させよ、と書いてあるレシピがある。「野菜室の温度や湿度は…なので、発酵に向いている」と知識を披露する。ニトリや無印の単身者用の冷蔵庫に野菜室はあったかな?野菜室である必要はない。空いてる隙間に入れておけば、ちゃんと発酵している。

 パンのプロ、料理研究家と称する人は、小難しくすることで自分の存在意義を誇示しているだけのよう。

 

バルミューダのトースターはハード系のパンには向かない

食パンをあまり食べないので、バルミューダが威力を発揮するのは、「ブーランジュBoul’Ange」のクロワッサンを温める時だけ。5ccの水を入れて蒸気が沸くようにし、指示通り4分ほど温めると絶品!ブーランジュ等々力店では、パンはすべて包装してあるので、客がしゃべりながらウロウロしても飛沫が直接パンにかかる心配はない。クロワッサン作りの工程などバゲットの比ではないほど大変そうなので、ブーランジュ+バルミューダでパリ気分を味わえる。

が、この高額トースターでバゲットを焼いてもなぜかイマイチなのだ。自分の出来損ないのバゲットだけでなく、プロの安くもないバゲットでも駄目。天然酵母使用、24時間熟成発酵の世田谷のシニフィアンシニフィエバゲットは1本540円もするが、バルミューダで焼いてもちっともおいしくない。水を入れずバゲットモードにしても、なぜかカリッと焼けない。1300Wで4分焼く(もちろん水なし)と多少はマシではある。

無印良品のスタイリッシュで値段はバルミューダ5分の1のオーブントースター1000Wで3-4分焼くとバゲットカリカリとおいしく焼ける。

電化製品の得意分野はそれぞれ違うのだ。その名もBalmuda The Toasterなんだから、食パンのトーストに特化していると考えよう。製品の値段だけではわからない。これはシャープヘルシオと同じ問題。

 

テレビで紹介されているプロのパン焼きの様子をみていると、大量に焼く必要があるせいもあるが、一次発酵、二次発酵、焼きとそれぞれの工程に合わせて、器具が違う。パン作りに特化した製造現場ももちろん家庭より広い。家庭の台所は狭いから一人二役も三役もする器具が必要なのかも知れないが、基本的には単機能器具の方が失敗が少ない。

 

14センチのバーミキュラでカンパーニュ

簡便な段取りで、気泡、硬さ、色、形がそこそこのパンができることは実証できた。そこで、最近買ったバーミキュラでカンパーニュを試しに焼いてみた。付属のレシピには、暖かいところで60分おいて発酵させる、とあるが、冷蔵庫長時間発酵にしてみた。

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予熱工程も経て、蓋をして250度で25分は守ったのだけれど

レシピが指定する全粒粉、ライ麦粉もなかったので、全部強力粉にし、焼き色を付けるためモルドパウダーを多めに入れた。十文字のクープは相変わらず失敗。色も白すぎる。蓋をしてオーブンに、とあるが、最後の10分ほどは蓋を取って焼き続けたらもう少し良い色がついたのかも。モルドパウダーを加えると、普通はもう少し焼き色がつくので、これは蓋のせいと解釈。

なんだか桃のようなパンになったが、スライスして焼いてみるとモルドパウダーのお陰か、それなりに焼き色がつく。嬉しいことに味もカリッ、モチッとしているのだ。

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ザラッとした感じが香ばしい。クラムを除いて写真を撮れば良かったのだけど

 指で伸ばして三つ折りを繰り返せ、とレシピにあるので頑張ってみたが、こねればこねるほど生地の気泡をつぶしてしまうようだ。もっとも、バゲットではなくカンパーニュなので、気泡がなくても良いーーーということは決してない。

 上質の素材で丁寧なフランス料理を供する渋谷セルリアンタワー40階の「クーカーニョ」のカンパーニュは、見事に気泡がある。周りはハードで中はもっちり。色も小麦粉の散らばり具合も申し分ない。

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天晴れ!ああ、やっぱりプロのパンはすごいなあ。

プロのすごいパンを前にすると気が萎えるが、気泡、クープ、色、焼く前にふる粉の量を工夫し、カリッ、モチッを目指し焼き続けよう。粉が130-180グラムくらいで何度も挑戦するのが練習用として適当な量だ。300グラムで焼くと、失敗作を数日食べることになるので、少量で何度も、がいい。自粛期間が延長されたことでもあるし。 

                              (おしまい)