人生の第三コーナーの衣食住

ライフスタイルブログ:インテリア、家のメンテ、ソーイング、失敗続きのパン作りなどをつづっていきます

断熱―インナーサッシが威力を発揮するのは、いくつかの条件が重なった時

北欧の人が断熱にこだわる理由

ヨーロッパでも温暖化で猛暑の夏にはエアコンが必要になってきた。が、ヨーロッパの住居の最大の課題は冬の暖房だ。外壁が厚さ50センチもある石造りの建物を温めるのは大変だ。石は土鍋と一緒で温めにくいが冷めにくい。ドイツもスイスもフランスも、ヨーロッパは各部屋の窓際や壁を取り囲むように設置されているオイルヒーター、温水ヒーターのパイプを常時つけっぱなしだった。住んだことがなくても、ホテルに滞在したことがある人ならご存じだろう。アパートの賃貸契約には、「冬は暖房を切るな」という条文があった。一旦切ると、建物全体を温めなおすのが大変なのだ。

 

南欧も寒いし、乾燥対策は必要

イタリアやスペインは南欧で暖かいイメージだが、マルセイユと札幌の緯度が同じなのだから、冬のローマやマドリードもそれなりに寒い。暖流のおかげで冬の乾燥は日本ほどではない、と言うがそれは外気の話。常時暖房つけっぱなしだから、室内は乾燥する。加湿器も売っていたので使ってみたが、日本から持って行った家具は反ったり、割れたりした。

 

写真は、2018年2月、ポンペイを一瞬にして灰で覆ったベスビオ山に降った雪。ナポリ南欧!)以南である。例外的な寒さだった、というが南欧の人もダウンコートは持っている。ナポリはハワイではない。

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冠雪のベスビオ山

 

ヨーロッパ人が気候変動に敏感だというけれど

産油国の英国やノルウエー、原子力に頼るフランスでは、電気代は日本よりずっと安い。電力不足の今の日本で地域電力会社間で電気を融通しているように、地続きのヨーロッパ各国は隣の国から電気を融通してもらえるのだ。EU加盟国である限り、全域である程度平準化した、日本より安い電気を使える。

それでも(!)暖房費が高くつく。暖房つけっぱなしだから。暖房費節約のためと環境配慮故にヨーロッパでは日本より断熱に熱心らしい。「らしい」というのは、一部の環境保護に熱心なグループ、政党の過激な活動とは裏腹に、ヨーロッパ人一般が日常生活においてそれほど断熱をはじめ、環境保護を実践しているとは到底思えないのだ。

スーパーのレジ袋は日本より何年も前に有料になっていた。が、ゴミの分別など有名無実である。燃えるゴミ、資源ゴミ(ペットボトル、ガラス瓶、紙)等別々の入れ物は設置されているが、皆おおらかに(要するに分別を気にすることなく)捨てている。スエーデンでは、回収した分別ゴミに異物が混ざっていると、機械がはねてくれるそうだ。これは合理的である。

こんなニュースもあった。

 

デンマークとか北欧の人は環境保護(女性進出、少ない汚職)で先進的と言われるけど、いまだにミンクの毛皮に屠殺

全ミンクの殺処分 北欧 #Yahooニュース news.yahoo.co.jp/pickup/6376179

 

日本では、ペットボトルのプラスティックラベルを外さないと自治体は持って行ってくれない、封筒は宛名部分のセロハンを外せ、段ボールはガムテープを外してきちん大きさを整えて出せ、とまあ小うるさいこと。とはいえ、書類の端にホチキスの針がひとつでもついていたら駄目、というわけではないらしい。

コロナでマスクポリスが出現したが(2021年1月には不織布マスクポリスへと進化したらしい)、他人の行動に難癖をつけずにはおられない、小姑根性のゴミポリスが近所に住んでいるからだ。ホチキスの針ひとつで残りの紙資源が全部没になるのなら、21世紀の日本でそんな紙のリサイクル機械を使っている方がおかしいのだ。住民の環境意識は千差万別。皆が優等生というわけにはいかない。100%きちんと分別できていなくても、許容範囲に収まっていれば資源ゴミとしてリサイクルできる装置を開発導入するのが先進国。できないのなら人海作戦でいくしかない。開発途上国でゴミあさりをするストリートチルドレンに頼るか、終戦直後の日本で缶や瓶を集めて小遣い稼ぎをしていた戦災孤児たちの時代に戻るかだ。

 

話がそれてしまった。パリの断熱事情に触れておこう

パリの豪壮な館は、天井が高く熱効率が悪い。天井が低く、温まりやすいのは、屋根裏のメイド部屋だけだ。もっとも身分制を反映して、彼らの部屋は表通りに面していないから、日当たりが悪い。が、窓が(牢獄のように)小さいので、熱が逃げる部分も少なくなる。

表通りに面しているのは縦3メートルはありそうな18世紀の観音開きの窓。その取っ手がまた芸術品のように精巧な彫り物が施してある。こんな木枠の窓がピタッと閉まるわけがない。建物そのものも微妙に傾いてきている。ガラスも18世紀のもので、立派過ぎてペアガラスに取り換えられない。二重サッシのような美観を害するものは、エアコンの室外機同様、表通りはご法度。緯度の高いヨーロッパは午後3時にはもう暗い。日照ははかないほどに弱弱しい。「東京の冬が好きだ、太陽が一杯だから」という駐在員もいる。

緞子のような厚い豪華なカーテンがぶら下がっているので、これは断熱に役立っているのかも知れない。昼間は下の方は開ける。3メートルもあるのだから、上部の開閉は無理。古い豪壮な建物は、その美観を維持しようと思えば、断熱や熱効率はある程度断念しなければならない。日本の古民家と同じだ。新しい省エネ基準が適用可能なのは、新築の天井の低いアパートである。

 

爆撃で壊された建物の方が新しい技術を導入している

敗戦国ドイツは、古い建物は軒並み爆撃を受け破壊された。戦後コツコツと町並みを元通りに修復していく過程で、新たな環境基準、省エネを取り入れてきた。戦前も戦後も寒いのだから。アウシュビッツに連れていかれるユダヤ人の写真を思い出そう。凍傷もひどかったに違いない。

ドイツの、爆撃前の町並みを忠実に再現しながらも、断熱に配慮した建物はあまり魅力的でない。ドイツを含めた北欧より、食事もファッションも魅力的な南欧は、環境意識は全般に低い。相対的には暖かいので、断熱意識も低くなる。

 

インナーサッシがすべてを解決するわけではない

もちろん、日本の熱伝導率の高いアルミサッシは断熱の観点からは論外である。以前のような金属そのもの、といった銀色ではなく、木目調を意識しているのか茶色いサッシも使われているが、夏も冬も外気の温度をそのまま室内に取り込む材質であることに変わりはない。触れればすぐわかる。このアルミサッシを樹脂製にすれば、それなりの断熱効果がありそうだが、マンションの場合、開口部のサッシやガラスは「共用部」にあたるので、管理組合の合意なしに個人ではいじれない。そこで、YKK等のインナーサッシを取り付けることが推奨されている。

 

二重サッシで空気の層を作れば、確実に断熱効果は上がる。もっとも、インナーサッシのおかげで「エアコンはほとんどつけない」「冬でも室内ではヒートテック一枚で、セーターいらず」と豪語する東京在住の人がいたので、「ちょっと待った、それは他の条件も重なった場合に限る」と言いたい。

 

インナーサッシが威力を発揮するための諸条件

  1. 部屋は日当たりの良い南向きであることー太陽光の力は絶大だ。特に冬は部屋奥にまで光が差し込む。が、北向きの部屋は論外、南向きでも隣家の塀が目の前に迫っていれば、陽の光など望むべくもない。冬の日照時間は短い。部屋に日光が差し込むのは、南側に遮るものが少ない好条件下でも最大で午前10時過ぎから午後3時くらいまでだ。日が陰れば、ほどなく室内温度は下がり、暖房が必要となる。
  2. 上下に挟まれている部屋なら、寒暖差は穏やかになる。3階建ての低層マンションの2階に住んでいた時、確かに暑さ寒さをダイレクトに感じることは少なかった。戸建てでも3階建ての2階なら、同じ効果はある。
  3. 床面積が小さい狭い部屋。2.のマンションも50平米足らずと狭かった。
  4. 天井が低いこと。都心の三階建て戸建て住宅は、大抵の場合天井は低くなる。おかげで温まりやすい。外国人駐在員仕様の天井の高い高級マンションや、吹き抜けの豪壮な注文住宅の場合、温める部屋の体積が大きいので、暖房費はそれなりにかかる。3.4.合わせて、部屋が面積と体積の両方でコンパクトであることが必要。
  5. 個人差体感温度は実に個人差が大きい。タクシーやオフィスの冷房は多くの女性には辛いので、男女差もある。更に体形。体脂肪が多いほど、寒さは感じにくくなるのかもしれない。夏にあれだけ汗っかきの肥満気味の人は、冬の寒さには強いのだろう。 

以上の理由で、ヨーロッパは断熱に熱心、日本でもインナーサッシをつければエアコンはほとんどつけなくても済む、という意見を散見したので、ホントかな?という意見を書き記しました。

 

最後に、窓枠材質の熱伝導率の表を参考までに。

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アルミは論外。木製は樹脂より優秀。

  (おしまい)